知らないのは君の方

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「バカなのか? バカだよな?」 「人の顔見て朝っぱらから『バカバカ』言うな」 「いや、バカだろう?」 「何が?」 「彩葉ちゃんもそうだけど、お前も思いっきり『好きです』オーラ出しまくってるクセに、さっきの態度何?」 「ほっとけ」 「彩葉ちゃんの時間割まで把握してるし」 「『彩葉』って勝手に呼ぶな」 「うざっ」 「しょーがないだろ? 気がついたらこういう立ち位置になっちゃってたんだから。俺だってどうにかしたいよ」 「ヘタレ」 「……言うな。俺が一番わかってる」 「その様子だと、あのこと知らないみたいだな」 「『あのこと』って?」 「それが……」 岩崎が話そうとしたところへ、同じ学科の北宮紫苑が割って入った。 「ねぇ、こんなとこで話してる時間ないと思うけど?」 言われて時計を見る。 「ホントだ」 3人で工学部の校舎に向かって急足になる。 「どうせ、彩葉ちゃんの後ろ姿を名残惜しそうに見てたんでしょ」 「うるさい」 「わかりやすっ!」 北宮紫苑は建築科の中でも、いや学内でもかなり目立つ美人だった。 そのせいで周りの男子にはチヤホヤされ、女子には睨まれている。 だから、北宮は俺と岩崎につるんでいる。 岩崎には超がつくほど仲の良いゲームオタの彼女がいる。そしてその彼女の川瀬菜々ちゃんには、岩崎と北宮が仲良くしていても「嫉妬」なんてものは存在しないようだった。 それで、北宮と岩崎はいい友達でいられる。 一方俺は、北宮を「美人」とは認識しているけれど、全くタイプでもなく、どうでもいい、という態度がありありとわかるらしく、やはり友人として付き合いやすいらしい。 教室に入ったところで、北宮が言った。 「そう言えば成田くん、あの話耳に入ってる?」 さっき岩崎も同じようなことを言いかけた気が。 「あのね」 北宮が話を続けようとしたところで、教授が教室に入ってきて会話は終了した。
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