知らないのは君の方

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「あー! 成田くん、良かった会えて」 廊下を一人で歩いていると、北宮が追いかけて来た。 「朝言ってた話なんだけど……」 「岩崎から聞いた」 「岩崎くんまで知ってるの? ごめんね」 「なんで北宮が謝る?」 「わたしのせいで成田くんにまで迷惑かけて」 「南雲が?」 「二葉さんが」 「何の話?」 「そっちこそ」 「南雲ってやつが彩葉に告った話じゃなくて?」 「違う。二葉さんの彼氏が、わたしに告ってきたって話」 「それが俺とどう関係あるわけ?」 二葉美穂は同じ建築科だったけれど、あいさつ程度しか話をしたことがない。 「二葉さん、わたしが成田くんと付き合ってると勘違いしてて、彼氏にフラれた腹いせに成田くんはわたしじゃなくて自分に夢中だなんて噂流してるみたい……」 「どうでもいい」 「そうもいかないでしょ? 彩葉ちゃん聞いたらいい気しないよ」 「そんな噂信じないと思うけど?」 「はぁ」 北宮はあからさまにあきれたようなため息をついた。 「女心がわかんないやつだね」 「何だよそれ」 「とにかく、彩葉ちゃんにも言っといて」 「そんな気にしなくてもいいと思うけど」 「いいから! ちゃんと言っといて!」 北宮に念押しされたにも関わらず、俺の頭は南雲のことでいっぱいで、その話を彩葉に伝えることをすっかり忘れていた。
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