知らないのは君の方

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製図課題を出し終えると、周りは夏休みを前に浮足立っていたけれど、俺はもうすぐやって来る誕生日の方が楽しみだった。 彩葉は毎年、チョコレートが好きな俺のために、誕生日プレゼントに手作りのチョコをくれる。 手作りと言っても、料理が全くできない彩葉のチョコは、溶かして型に入れて固めるだけの簡単なものだけど、そんなことは関係なくて、俺のために作ってくれることが嬉しい。 誕生日の日、いつものように彩葉と一緒に大学へ向かったけれど、チョコをくれる気配は全くなかった。 正門を入って別れた時も、どことなくいつもと違っていた。 授業が終わり、帰りかけたところで、二葉が声をかけてきた。 「成田くん、ちょっといい?」 そう言うと、可愛い袋を差し出された。 「これ、成田くんに。誕生日って聞いたから」 「俺に?」 「手作りのチョコケーキ。受け取って」 「ありがとう」 その時、ガタンという音がしたので、そっちを見たけれど、誰もいないし何もなかった。
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