知らないのは君の方

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「あーあ、やっちゃった」 床に座ってゲームをしていたらしく、奈々ちゃんが足元から顔を出した。 「奈々ちゃん……いつからいた?」 「最初から。恋愛ゲームならここで彼女とは終わりだよ」 「これは現実だから」 「そうだね」 「彩葉、俺の気持ち知ってたって」 「聞いてた」 「だったら何で……」 「その答え、彩葉ちゃん言ってたのに伝わってないの? 成田ってクズ男だね」 「本人前にして『好き』とか簡単に言えないだろ」 「何それ。彩葉ちゃんのこと何だと思ってるの? 思ってるだけで気持ちが届くわけないじゃん、クズ男。きっと今頃、南雲が彩葉ちゃんのことなぐさめてる。それで彩葉ちゃんはその優しさに気付くんだよ」 そんなことを言われて言葉も出ない俺を、奈々ちゃんは睨みつけた。 「どうして歩くんが紫苑さんと仲良くしてても、わたしが気にしてないかわかる?」 「奈々ちゃんも北宮を好きだから」 「そういうとこクズ男なんだよ。歩くんはちゃんと言葉にしてくれるから。自分が好きなのは紫苑さんじゃないって。何度も」 「知らなかった」 「言わなくてもわかるだろ? とかクズ男の発想。他人の考えてることなんてわかるわけないじゃん。このままじゃ、彩葉ちゃん失うよ~。いなくなっちゃうよ~。ってことで、次のイベントそろそろ始まるから」 奈々ちゃんがゲームに目を落としたので、これ以上話す気がないんだとわかった。
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