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奈々ちゃんの言う通りだ。
でも、だったら、どうしたらいいんだよ?
廊下を歩きながら窓の下に目をやると、彩葉が歩いているのを見つけた。
(彩葉!)
心の中で名前を呼んだ。
(彩葉!)
でも、彩葉は気付かない。
何度も名前を呼んだけれど、声に出してないんだから気がつくわけがない。
強く思ってたら思いが届くなんて、そんなの幻想だ……
その時、後ろから来た男が彩葉を呼び止めたらしく、彩葉が振り向く。
立ったまま、何か話をしている。
男は南雲だった。
岩崎から話を聞いて、すぐにどんなやつか見に行ったから、顔を知っていた。
男の俺が見てもイケメンだとわかった。
チャラい感じじゃなくて、優等生タイプのいい男。
やがて彩葉と南雲は並んで俺の視界から消えた。
マンションに帰って、自分の家のドアの前に立っていながらも、彩葉の家のドアの方が気になった。
南雲と、あれからどうした?
頭の中で、南雲と彩葉が一緒にいる。
彩葉が俺の前からいなくなるなんて、考えたこともなかった。
ずっと隣にいると思ってた。
何で当たり前だなんて思えた?
ドアを背にすると、急いでマンションの階段を走っておりた。
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