政略結婚

10/20
前へ
/80ページ
次へ
「全く。」 そう言って笑った圭也さんの笑顔が、お日様みたいに暖かった。 入り口でチケットを貰い、私達は常設展示から見て回った。 その間、圭也さんは絵ばかりを見て、しゃべりもしなかった。 大人しい人なのかなって思った。 「いやあ、楽しかったですね。」 圭也さんが言葉を発したのは、もう展示を見終わってからだった。 結局、有名な名前の画家さんは出てこず、誰の絵だか知らない物をずっと見て終わった。 それなのに、楽しいと? その時だった。 私の背中に、誰かがぶつかった。 「おっと、危ない。」 倒れようとする私を、圭也さんが支えてくれた。 「ありがとうございます。」 お礼を言うと、圭也さんは手を握ってくれた。 「紗良さん。」 「はい。」 顔を上げると、圭也さんの真剣な表情が、そこにあった。 「僕はあまりしゃべらず、つまらない男だと思いますが。あなたを守る事はできます。」 その言葉に、何故かキュンとしてしまった。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加