政略結婚

2/20
前へ
/80ページ
次へ
そしてお見合いの日。 私は母さんの着物を着て、小料理屋に向かった。 「ねえ、お相手の人はどんな人なの?」 父さんに聞いたが、本人は首を傾げる。 「父さんも会った事がないんだ。ただ父親である上司も来るから、失礼のないようにな。」 「はーい。」 タクシーの窓から、外を見る。 どんより雲が周囲を覆っている。 まるで私の気持ちを、表しているみたい。 「着きましたよ。」 母さんに言われ、渋々タクシーを降りる。 「はい、笑顔。」 そう言われ、作り笑いを浮かべる。 「あんたはそうやっていると可愛いんだから、笑ってなさい。」 「面白くもないのに、笑える訳ないでしょ。」 軽く息を吐いて、私達一家は小料理屋の奥の部屋に通された。 「お相手の方は、もう到着されていますよ。」 「何⁉上司を待たせるなんて、俺としたことが!」 父さんは急いで、部屋の中に入って行った。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加