67人が本棚に入れています
本棚に追加
「旦那さん、何の仕事してるんですか?」
「警察官です。」
「へえ。ウチは自衛官なんですよ。」
私は一瞬、息が止まった。
その奥さんの顔が、少し疲れているように見えたから。
「自衛官とか警察官とか、消防官とか。朝の見送りは必ず笑顔でしろって言いますよね。」
「どうしてなんですか?」
「その日、生きて帰って来るか分からないからですよ。」
私はドキッとした。
まさか、圭也さんに限って、そんな事は。
「私の主人も、怪我をして今入院中なんです。嫌ですよね。喧嘩した朝に、仕事中事故に遭うって。」
だから、奥さん暗い顔をしているんだ。
「ごめんなさいね。こんなお話、朝からして。」
「いいえ。貴重なお話、ありがとうございます。」
そう言って、私は部屋の中に入った。
警察官の奥さんって、私が思ったよりも大変かもしれない。
私は、ため息をついた。
その日、生きて帰ってくるか、分からない。
そんな職種の人がいるなんて。
思ってもみなかった。
最初のコメントを投稿しよう!