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「遅くなりまして申し訳ございません。前田でございます。」
父さんに合わせて、頭を下げて部屋の中に入った。
「おお、前田君。待っていたぞ。」
聞こえてきたのは、渋くて低い声。
見ると、いかにも”偉い”オーラが出ているオジサンだ。
そして、その隣にはこれまたいかにもお坊ちゃまという男性。
本当に大丈夫なの?こんな家柄の人とお見合いして。
「では、自己紹介を。」
お相手の家族のお母さんが、お淑やかに笑う。
「一条圭也と申します。」
お辞儀もゆっくりと、気品溢れている。
「前田紗良です。宜しくお願い致します。」
なるべく丁寧に頭を下げたけれど、どうだったかな。
「まあ、とても可愛らしいお嬢さんだこと。」
圭也さんのお母さんは、どうやら私を気に入って下さったみたい。
「そうだな。さすが前田君のお嬢さん。しっかりなさっている。」
「ははは……」
一目見ただけで、そこまで言われるなんて、お世辞だと分かっていても違和感。
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