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Nが車の運転をしていた。助手席には俺が座っていた。彼女の運転は荒く、わざと危険な道を走っていた。そのうち道に迷った。砂利道ですぐ左側が崖になってそこには川が流れている道を走っていた。あろうことか、彼女は俺の方を(有り得ないが)笑顔で道を並んでいく人々に視線をやった。途端に車は大きく左側へと傾いた。俺は「どこ観てんだよっまっすぐ前見て運転しろっ」と怒鳴った。目的地には付かなかった。代わりにどこか聞いたことのある温泉宿?に到着した(今は名前は思い出せない)車で全面ガラス張りのフロント?のようなところに大人数の客がいるのを確認した。車はどこから入ったのか、(入れたとしても不可能だが)兎に角車から宿の確認をした。然し、目的地では無い。どこを目的地としていたかは分からないが、兎に角そこは目的地の正反対の方角にあるとわかった。俺はNを叱責した。俺が地図を見て方向を指示した気がする。次に着いたのは(これも目的地ではなかった)大型のショッピングモールであった。今思えば何から何まで初めての場所なのに見慣れた場所だと俺は認識した。いつの間にか車は降りていた。人混みに揉まれながら、俺たちはここでも無いとあたりを彷徨していた。と、途端に俺は閃いた。このショッピングモールをまっすぐ突っ切れば目的地に着く!と。(以前目的地は分からない)然し、ショッピングモールから出ることが出来なくなってしまった。どこを通ってもどの道を選んでも見覚えのある場所と繋がっていて、まるでぐるぐる複雑な迷路を行ったり来たりしているようだった。俺は「出口」を求めた。見慣れてしまったモール内をあちこち歩き回っているうちに、知人を見つけた。出口を求めると「このまままっすぐ行けば良いよ」と言われた。それに従い道を辿っていくと、ふと見落としていた小さな通路を見つけた。その扉を開くと、階段が斜めに走り、踊り場がない、階段同士が連結した場所が広がっていた。階段に張り付くように床がありその上には何百という段ボールが畳んで綺麗に縦に収められていた。おそらく2階と思われるスペースに並べられた段ボールの奥の奥に小さな扉があった。おそらくそこが出口だろう。然し、登り場のない階段を登ることはできない、どうしようかと考えていたら、ふと階下の扉が閉まる気配がした。このまま放っておけば永遠に閉じ込められる!と咄嗟に考えた俺は「絶対に戸を開けておけよっ」とNに半ば怒鳴りつけながら命令した。その後もその部屋の探索を続けたが、脱出口にするには難しいと判断し、部屋を後にした。確かその後もそれらしい入り口を見つけては、段ボールや、よく覚えていないなんらかの資材によって通路を阻まれ出口をどんどん見失っていった。
ここで場面は飛ぶ。
気づいたら俺は、透明な宙に浮くレールの上を腹這いで移動していた。レールの下は言わずもがな、ショッピングモールの全体を写し、そこには買い物客も多く見られた。要はそこから落ちれば一巻の終わりということだ。明らかにレールの幅は俺の体を支えられるようなものでは無かったが、それでも不安定なその上を匍匐前進でなんとか渡り切ることが出来た。渡り切った先には細長い廊下がショッピングモールの高層の壁に沿って作られ、その狭い幅にいくつもの惣菜が置かれていた。どうやら金銭のない人間用の惣菜屋らしい。消費期限の迫ったものや作りすぎたものはポストのような場所に一緒くたに並べられ、誰でも無料で撮って良いという形をとっていた。Nは確か、イカリングとイカの揚げ物とインゲン豆かアスパラ?がセットになったものと、おにぎりの上にシャケが這うように一尾乗っかっているおにぎりを選んでいた気がする。俺はイカリングを一つつまみながらオムライスのおむすび?とかなんか食えそうなものを適当に取っていた。食料を調達してまた俺たちは出口を求めて歩き出した。こんな場所なんて来たことがないのにまた見覚えのあるゲーセンや雑貨コーナーがあった。
ここから先はあまり覚えていない。
俺たちは2、3人人が集まっている大きな人形(確か象だった気がする)の前に集まっていた。中身は当然ワタが詰まっていると思うはずだが、そこにはわたではないゼリーのような何かがあるということがわかっていた。俺たちの他に集まっていたのは同い年くらいの女性(だけ覚えている顔は思い出せない)1人とその他であった。大きなぬいぐるみを一通り調べたが、中身をなぜか把握していただけで収穫はなかった。その後、俺とNはさらに探索を続けた。すると、脱出できなかった部屋の段ボールなどが綺麗になくなり、代わりにガラス戸と入り口の間にプラスチックの粘土のようなものが隙間を埋めて扉を閉ざしている状態の部屋に出会した。今まで行手を阻んでいたものはどこにいったのだろうか...今になってみればそう考えるのが妥当であるが、夢の中の俺はそんなことには目もくれず、扉へ向かって走り出した。するとそれまでいなかったはずの人間が、隙間を埋める粘土のようなものを一生懸命剥がしているではないか!その2人に話を聞くと、この粘土を剥がせばガラスの扉は開き、脱出口につながるという。俺は誰よりも無我夢中で粘土を剥がした。意外にもそれは思ったよりも簡単に剥がれ、念願のドアが開く!然しその先に現れたのは見覚えのある景色。何度も何度も迷ったショッピングモールのコーナーの一つであった。相変わらず人が群れて賑わっていた。俺たちは落胆し、次なる扉を探し求めた。多分であるが、似たようなシチュエーションで3箇所ほどは扉を開場したと思う。然し結果は全部同じ。通じていたのはショッピングモールのそれぞれの売り場に客。見るのも飽きた光景が広がるばかりであった。
ここでもなんでそこに移動したかは覚えていない。
扉の開場には成功したが脱出できなかった俺たちは、再び象のぬいぐるみの前に立っていた。そこにはやはり、女性と数名の人間がいた。その者たちは何を思ったのか、象のぬいぐるみを壊しはらわたをむしゃくしゃに取り出していた。もちろんそれは綿なんかではなく、ゼリーのようなものであったが。それを見ているうちに俺もやらねばと思い、彼女らのゼリーの取り出しに加わった。するとそれまで一度も口を開かなかった彼女がこういった。「これはここに閉じ込められている人々の記憶。これさえ取り出して前に進んでいけば出口につながる」と。なんとも突拍子もない理論であるが、なぜか俺はその時心の底から納得した。それからはもうゼリーのはらわたを無我夢中で書き出した。やっと人1人が入れるようになると彼女は先にはらわたへ潜り込み、道を開きながらぐんぐん進んでゆく。俺も慌てて置いていかれぬようその後に従ってズンズン進む。距離は覚えなていない。が、途中でNが躓き、まったような気がする。
そうして俺たちは外に出ることが出来た。そこは立体駐車場であった。彼女は「あそこにある粘土やゼリーは客たちの記憶とか色々な物。要はあの象だった」と俺たちに教えてくれた。
空を見上げた。太陽が燦々と照ってとても眩しかった。
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