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廃墟プールは波がなく、海よりよほど安全だし魚も泳いでいて、いい遊び場だった。
それなのに、いいよと即答できなかった理由は、地元の人間なら誰でも知っている噂のせいだ。
『小学生の女の子が、溺れて死んじゃったんだって。一緒に遊びに来ていた4人の友だちは、先に帰っちゃったから、その子の魂はまだ4人の友だちを探しているんだって。
だから晴れて水が透き通った日には、廃墟プールに潜ってはいけないよ。プールの底で、今でもずーっと友だちを待っているあの子に見つかるよ……』
あの頃は潜らなきゃ平気だよ、と平気で遊んでいたが、今思うと気味が悪い。
美姫が僕の腕を揺さぶった。
「ねえねえ、夏休みになったら連れて行ってよ」
キラキラと目を輝かせて、美姫が僕の方に体を乗り出してくると、ドキッとして反射的にうなずいてしまった。
「やった! 朱莉にも声かけるね」
「あっ、そう、だね」
てっきり、ふたりで行くんだと思い込んでいた。当てが外れたが、二人じゃないと分かった途端に断るのも、下心が見え見えで気が引ける。結局、断ることは出来なかった。
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