48人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
♢
夏休みが終わり、大学が始まった。ペットボトルのお茶でも買おうと大学内のコンビニに入った。
「牧江くん、おはよう」美姫が声をかけてきた。
「美姫か?! ずいぶん痩せたんだね……。ダイエットなんか必要ないのに……」
「ううん。ダイエットしたわけじゃないんだ。喉が渇いて、いくらでも水が飲めるの。それでお腹がいっぱいになっちゃうから、ご飯があまり食べられないの」美姫は笑って、手に持った天然水のペットボトルを振ってみせた。
「水って言えば、慧君、水中毒で入院したんだって」と話しかけてきた朱莉も痩せている。
「十リットルくらい一気に水を飲んじゃったらしいよ。じゃあ、私たち次の授業は別の教室だから。またね」と去って行くふたりの後ろ姿を見送る。
「あっ!」
思わず叫んでしまって、自分の口を手で押さえた。サンダルを履いた美姫の白い足首に、黒い痣が浮かんでいたのだ。まるで誰かがギュッと握ったような……。
最初のコメントを投稿しよう!