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「手、掴まって?」 少しだけ顔を上げると、見えた。 ”りい“の手よりも白い手が。 でも、”りい“の手よりも大きな手が。 その手を見て、”りい“はゆっくりとだけど手を動かした。 そして、その手に少しだけ手を乗せると・・・ 「・・・・・・ゎっ」 凄く強い力で、でも優しくも感じる力で”りい“のことを立たせてきた。 「あと少しでゴールだよ。 ゴールまで一緒に走ろう?」 そう言ってきた男の子の顔を見てビッッッックリした。 だって、凄く格好良い男の子で。 凄く凄く、王子様みたいな顔の男の子で。 「かけっこが終わったらうちのシートにおいでよ。 うちのお父さんがお医者さんだから、病気を診て貰おう?」 王子様が”りい“の手を引いた。 「それまでもう少し、頑張れそう?」 そう聞かれ・・・ ”りい“は王子様の手をギュッと握った。 「がんばれそう・・・。 りい、まらがんばれそう・・・・。」 王子様とゆっくり走りながら、聞いた。 「りぃのびょーき・・・なおる、まで・・・・いっしょに、いれくれる・・・?」 「うん、いいよ。」 王子様と一緒にゴールをした”りい“に、今までの応援よりももっと大きな大きな声が園庭の中に響いた。 その響きの中、聞こえた。 「純愛(じゅんあ)!!偉かったぞ!!! 病人と怪我人と妊婦には優しくするっていう父さんからの言い付け、ちゃんと守ったな!!!!」 その声の方を見ると、”めい姉“が”りぃ“に向かって手を振っていた。 そして、その隣にはこの王子様とソックリな顔をしたお兄さんが立っていて。 「王子様みたいだったぞ、純愛!!!!」 さっきと同じ声がそのお兄さんの口から出てきた。 「私は女だから!!! にぃにのバカ!!!!」 本当に嫌そうな顔でそう言っている王子様・・・ではなく、”女の子”に聞いた。 「りぃ、の・・・なまえは、まな・・・りぃ。 ああたのなまえ・・は?」 「私の名前は園江純愛。 みんなからは純って呼ばれてるよ。 りいって名前はりいに似合ってて可愛いね。」 そう言ってくれた女の子の顔も凄く可愛かった。 あんなに王子様に見えたはずなのに、何でか凄く可愛く見えて。 「じゅん・・・」 呟いた”りい“に、”じゅん“は何だか苦しそうに笑いながら”りい“のことを見た。   その顔を見て、”りい“は何となく言った。 「じゅんあ、ちゃん・・・。」 「あ、ごめんね。 私その名前嫌いで。」 そう言われてしまい、少し考えてからまた言った。 「そ・・・・そ、ソっ・・・・・・ちゃん。」 本当は”そのえちゃん“と言いたかったけど、上手く動かないこの口からはちゃんと声が出ていかなかった。 なのに、女の子は凄く嬉しそうに笑って。 「良いね、ソっちゃんって。 うん、そう呼ばれるの好きかも。」 ”好きかも“と言ってくれた”ソっちゃん“が、本当に嬉しそうに笑った。 「じゃあ私もアダ名で呼ぼうかな。」 そう言って、ソっちゃんは少しだけ考えた後に口を開いた。 「マナリー。」 ”間中理衣“ 自分の名前をちゃんと言えず、”まな“と”りぃ“だけの自己紹介になってしまったあの日。 私はソっちゃんから呼ばれた特別な名前に凄くドキドキとした。 凄く好きだと思った。 凄く凄く好きだと思った。
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