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そして渋谷ハチ公前。
朝の早い時間帯とは言え、やはりここには一定数の人たちが常にたむろしている。
果たしてギルドマスターやメンバーはこのなかにいるのだろうか。
すると、トキヤを含め、四人のスマホが一斉にメールを受信した。
『ギルドマスターです。
おかしいですね。メンバーは全員で十二人召集したはずなのですが、まさか、たったの四人しか集まっていないとは……。』
トキヤは自分以外で、咄嗟にスマホに目を落とした他の人物に視線を向ける。
自分と同じくらいの年齢の男女と、タバコのにおいが染み付いた無精髭の中年男性だ。
互いが互いに目を合わせて、どこか気まずい雰囲気が流れると、無精髭の中年男性が口を開いた。
「万が一の有事を想定して来てみたら、ガキの悪戯かよ。お前ら、警察おちょくんのも大概にしろよ」
それだけ言って、中年男性が立ち去ろうとすると、もう一度それぞれのスマホにメールが届く。
『気をつけてください。
既にこの渋谷の街には地球人に擬態した多くのエイリアンが身を潜めています。
今は説明している時間がありません。
誠に勝手ながら、あなたたちのスマホにサイキックアプリをインストールさせていただきました。
まずはアプリによるサイキックスキルを駆使して、十二人のギルドメンバーと合流してください。』
「嘘……!」と、声を上げたのはトキヤと同い年くらいの女だった。「本当に知らないアプリがインストールされてる!」
「うわ、マジじゃん!」と、男も続ける。「しかもこれ、なんでか知らねえけどアンインストールできねえぞ!」
二人が慌てふためく様子に中年男性が足を止めた。
「なんだこりゃ。新手のサイバー犯罪か? おいお前ら、間違っても開いたりするなよ?」
だが、中年男性の警告も虚しく、男のほうは既に開いてしまっていたようだ。
「なんだよこれ……スキル、サードアイ……周辺の生体反応を画面に表示して地球人に擬態したエイリアンを見抜けます? まさか、なんかのゲームか? クリアしたら賞金とか貰えんのかよ」
釣られるようにして女も女でアプリを開く。
「私のはヒーリングファクターだって。傷の手当てや解毒ができる。ただしそれらの治癒行為には対象の生命力を大きく消耗する……ってこれ、もしかして怪我人が出るってこと?」
中年男性はめんどくさそうに髪をくしゃくしゃと掻きながら、大きなため息をついた。
「お前ら……変なウイルスに感染しても知らねえぞ」
この中年男性はまるで自分が警察のようなことを言っていた。
「あの、警察……なんですよね。今はこういう詐欺やサイバー犯罪って増えてるんですか?」
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