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トキヤの質問に中年男性は存じませんといったふうに両手を広げる。
「俺は警視庁二課の刑事だ。この手の犯罪なら専門なんだが、今のところ何がしてえのかわからねえ。まずは署に戻って報告しねえと」
そして中年男性は「あーあ、せっかくの非番が台無しだ」とぼやきながら立ち去ってしまった。
トキヤと同年代の男女の三人がハチ公前に取り残される。
あまり大袈裟に騒ぎ立てると、ハチ公前にいるその他の人たちに不振がられるかもしれない。
すると、男のほうがトキヤに声をかける。
「俺は犬方健司。ケンジでいいよお前は?」
「俺は、巻島透季也。そっちは知り合い?」
トキヤが女に視線を向けると、女は首を横に振った。
「私は加納知沙希。多分、みんな初対面だと思います」
「ところでトキヤ、お前のスキルってどんななんだ?」
と、興味津々のケンジが前のめりになる。
「俺のは……いや、わからないです。なんか、アプリがロックされてるみたいで……」
すると、トキヤのスマホにだけメールが届く。
『最初からアプリがロックされているなんて、あり得ません。
強力なスキルを連続して使わない限り、そのようなことにはならないはずです。』
このギルドマスターと名乗る人物は今もどこかから、この会話を聞いているのだろうか。
「なんだよそれ……もしかしてチート級の強力スキルだったりするんかな?」
本気で何かのゲームだと思っているのだろうか、ケンジはどこか楽しそうだ。
だが、トキヤの脳裏にあの夢の映像が甦る。
そしてギルドマスターが言っていた二度目の6月29日というワード。
――まさか、そんなわけ無いよな。
「刑事さん……行っちゃったね」と、チサキ。「身に覚えの無い請求とか来たら、どうしたらいいんだろう」
そう言えば、あの刑事の名前も、サイキックアプリのスキルもわからないままだ。
ケンジはまだゲームか何かだと思っているし、チサキとあの刑事に関しては何かの犯罪に巻き込まれたと疑っているみたいだ。
だが、トキヤは違った。
昨晩見た夢と、最初に送られてきたメールの内容。
――ただの思い過ごしだといいんだけど。
しかし、あの夢の内容が現実に起こるとしたら、みんなが思っている以上に事態は深刻かもしれない。
「とりあえずだけど、他のギルドメンバーを探してみない? 今日とか、二人とも予定は大丈夫?」
「俺は別に構わねえけど、探すったって、俺のスキルはエイリアン探しにしか使えねーみたいだし……」
ケンジはトキヤの提案に乗ってはくれたみたいだが、確かにギルドメンバーを探すことに長けたスキルではない。
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