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Day1
渋谷が消えてゆく。
スクランブル交差点も、マルキューも、ハチ公も道玄坂も。スペイン坂もパルコも、東急ハンズも。道ゆく人々も何もかも。
突如として空に現れた謎の黒い球体によってすべてが吸い込まれてゆく。
――これがギルドマスターの言ってた終わりの日なのか?
――俺たちは失敗した?
――他に打つ手は無かったのか?
AM06:00
自分の体が球体の引力に負けて空に吸い込まれようとした途端、目が覚めた。
全身にぐっしょりと嫌な汗をかいている。
無理もない。あんなに生々しくて恐ろしい夢は初めてだからだ。
這い出るようしにてベッドから起き上がると、時刻はまだ朝の六時。大学の講義までの時間はじゅうぶんにある。
すると、スマホがポコンと音を立てる。
『おはようございます巻島トキヤ様。二度目の6月29日はいかがですか?
例のサイキックアプリはスマホにインストール済みですので、次こそはくれぐれも使いどころを誤らないように。
では、引き続きご健闘をお祈りしております。
ギルドマスターより。』
――二度目? サイキックアプリ? 何を言っているのか意味がわからない。
だが、スマホを確認してみると、確かにPアプリとかいう身に覚えの無いアプリがインストールされている。
どう考えても怪しさしか無いので、おそるおそる開いてみるが、どうやらロックされているらしく、起動することができないみたいだ。
新手の詐欺か何かだと思うことにして、トキヤはこの嫌な汗をシャワーで洗い流すことにした。
今年の夏は暑さが厳しい。このままエアコン代をケチっていたら干からびて死んでしまいそうだ。
シャワーでさっぱりしたトキヤはタオルで髪を拭きながらスマホをチェックする。
すると、さらにもう一件のメールが届いていた。
『おはようございます。
このメールを受け取った方々は渋谷防衛戦線のギルドメンバーに選ばれました。
私はギルドマスターと申します。
今、この日本はエイリアンによる侵略の危機にあります。タイムリミットは一週間。
ギルドメンバーに選ばれた方々は速やかにハチ公前に集合してください。
詳細はそちらにて追って伝えます。』
発信元のメールアドレスは先ほどと同じだ。
だが、どうにも前のメールと話が繋がっていない気がする。
二度目とかサイキックアプリとは、いったいなんだったのだろうか。
最初のメールでギルドマスターを名乗る人物は、明らかにトキヤのことを知っていたように思える。
妙な胸騒ぎというか、不思議と以前にも同じようなことがあった気がする。
気が付けばトキヤは服を着替えて、朝食も摂らずに京王線に揺られていた。
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