絵の具の神様

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 ある日の図工の授業中のこと。  花を描く時間だった。  健太(けんた)がふとイタズラを思いついた。  黒の絵の具を手に塗りたくり、画用紙や窓にバンバンと押した。  先生に叱られても、どこ吹く風。  授業のあと絵の具を落とそうと水で流したが、せっけんを使っても落ちない。  みんなが使うのと同じ水彩絵の具のはずなのに、健太の手は何をどうしても黒いままだった。 「きっと絵の神様が、絵の具をイタズラに使うなって怒ったんだよ」みんなが口々に言う。 「もう馬鹿なことしません、ごめんなさい神様」  健太が泣くと、絵の具はスルスルと落ちてきれいな手に戻った。  この日以来、健太はイタズラをしなくなった。  他の子も、絵の神様に怒られたくないから、絵の具を大事に使うようになった。
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