03.縁色反応

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盛大に執り行われる花火葬に、僕は圧倒されていた。 最年長だった松田老人の花火は、温かいオレンジ色でゆっくりと上がり、優しく散っていった。 あり得ない滞空時間で、時が止まったかのようだった。 その光景は、彼の長い人生が多くの人々に温もりを与えたことを物語っていた。 若松ユリさんの花火は、鮮やかなピンクと白で爆ぜ、彼女の短くも情熱的な生を象徴していた。 その花火が空に咲いた瞬間、僕たちは息をのんだ。 そして、希望あふれる小学生の未来が病で閉ざされたことを察し、涙がこぼれた。 佐々木信也さんの花火は深い青と銀色で、不規則に爆ぜる様子が彼の過酷な生涯を彷彿とさせた。 不可思議なことだが、会ったこともないのに、彷彿とするのだ。 それは彼が生前に抱えていた重い責任と愛情の重みを表していると感じられた。 野中美紀さんの花火は、教室を思わせるような形で薄紫と緑色に広がった。 きっと、彼女は多くの生徒たちに慕われた教師人生を歩んだのだろう。 彼女が子供たちに注いだ愛情が、花火となって夜空に広がるのを見て、僕は何とも言えない感動を覚えた。 「すごいね、それぞれの花火が、それぞれの人生を語っているみたいだ」 僕は、感嘆の息を漏らしながら、次々と打ち上げられる花火を見上げていた。 参列者は自然と手を取り合い、故人への敬意と、未来への希望を込めながら、その一瞬一瞬を共有した。 花火葬はただの伝統ではなく、生と死をつなぐ美しい橋渡しであることを、本能的に理解した。
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