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04.黒
「本年最後の花火葬は、5月に亡くなった黒田正樹さんです。58年振りの里帰りです」
花火葬は、ある意味で村最高の娯楽だ。
知らない街で暮らした人の人生を花火で追体験するのは、レア体験らしい。
村全体が期待で胸を躍らせる中、僕とミチは手を握り合いながら、この一瞬を見守っていた。
しかし、打ち上げられた祖父の花火は、期待とは裏腹に、漆黒の煙を夜空に描いた。
それはまるで、黒い墨が天の川を侵食するかのような異様な光景だった。
初めての花火葬だが、僕の目で見ても、その色は怨念を伴う不吉なものとして映った。
背中にじっとりと嫌な汗をかく。
息をすることも禁じられたように、僕と父はその場に固まった。
互いに目も合わせられないが、動揺だけが伝わってくる。
永遠に感じられた一瞬の静寂の後、村人たちの間からどよめきと悲鳴が上がり始めた。
「災いよ! これは災いの兆しよ!!」
年配の女性が叫び声を上げると、それが合図となり、周囲は急速に騒然となった。
恐怖と不安が、墓地に集まった人々の間に急速に感染していく。
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