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僕が打上場に着くと、花火師は動じることなく、ただじっと漆黒の花火を見上げていた。
彼の顔には、複雑な感情が浮かんでいた。
「羽賀さん、何か心当たりがあるんじゃないですか?」
彼は深く息を吸い込むと、ゆっくりとこちらを向いた。
「黒は罪や後悔の色……。正樹が……君の祖父が村に戻ってこなかった理由だ」
「理由って、何ですか? 教えてください!」
僕の声は、感情の昂ぶりのまま、高く、早口になっていた。
知りたかった。
何も分かっていなかった祖父のことを。
このままでは、祖父が抱えていた重い過去を知ることなく、この地を去ることになるかも知れない。
それはとても怖いことだと感じた。
祖父の人生を否定する気がした。
誰にも言えず、抱えたままの闇。
漆黒の花火は闇そのものだ。
そんなもの、墓場まで持って行かせたくない。
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