04.黒

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「ほら……。あ!」 花火は上空で漆黒から灰色に、灰色から茶色に、茶色から緑色に、緑色から黄色に、そして大輪の赤が咲き、夜空で虹色の龍が旋回した。 火薬に混じり、かすかに懐かしい匂いがした。 忘れかけていた匂いが。 次々に打ち上げられる祖父の花火。 その色とりどりの炎色反応は、一度は墓地から出ていった村人たちの足を止めた。 「綺麗。こんな縁色反応みたことないわ」 「黒田さんの悲しい想いも、解放された魂も、すべて降り注いでいる」 至る処から、感動の声が上がった。 祖父の花火は、もう怨色反応ではなくなったのだ。 「見てみて」 ミチが僕の手を引き、彼方を指さす。 あの銀杏の葉が、祖父の花火に応えるように、光りながら揺れている。 あぁ、銀杏の根元にあった石仏は、きっと祖父の恋人だったのだ。 2人はようやく、一緒になれる。 空の上でも、銀杏のもとでも、好きな方を選んで欲しい。 そう願った。 僕と父なら大丈夫だ。 今までずっと見守ってもらったから。 今夜の幻想的な花火葬を、僕は一生忘れないだろう。 気づくと、ミチの姿がなかった。 誰に聞いてもそんな少女は知らないと言われた――。 (花火葬 了)
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