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母親がいないとか、父親がいないとか、そんなのは今はよくある話だ。
父と祖父との三人暮らしは、そう多くなかったけど。
祖父が死んでも、マンションは広く感じなかった。
お年寄りには珍しく、ミニマリストだったからかも知れない。
処分する私物なんてほとんどなかった。
想い出の品もない人生は、可哀想なのだろうか?
それとも、翼が生えるほど軽やかだったのだろうか?
四十九日が過ぎても、祖父の遺骨は自宅にあった。
祖父の訃報をどう知ったのか分からないが、手紙が届いたのだ。
差出人は、羽賀さんという祖父の同級生だ。
僕たちは、同封された案内図を頼りに北へ向かった。
今年の夏も猛暑らしい。
上着を脱いでいても、喪服代わりの学生服は暑い。
UVカットガラス越しに、陽射しが強く照りつける。
ジリジリ鳴るのは、太陽だけではない。
気がつくと、都会では聞かない、虫の鳴き声が響いていた。
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