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羽賀さんが火薬と調合するために父から遺灰を受け取る間、僕はミチに都会暮らしのことをあれこれ聞かれた。
「いいなぁ、ここにはないものがたくさんあるんでしょ?」
ミチは目を輝かせながら僕に尋ねる。
彼女の興味は真剣そのもので、その純粋な好奇心がとても新鮮だった。
今時、SNSやテレビでいくらでも情報は入ってくる。
もしかして、ここにはネット環境がないのかと不安になった。
スマホは圏外ではなかった。4Gだったけど。
「そういえば、まだ名前を聞いてない」
「あ、黒田大樹。大きな樹木でたいじゅ」
「もしかして、お祖父ちゃんが付けた?」
「うん。何で分かったの?」
ミチは悪戯っぽい笑顔で、指さした。
その先には、一本の大樹がそびえ立っていた。
「村唯一の天然記念物。銀杏岡の銀杏の木!」
「あぁ、あれが……」
「見に行かない?」
「うん」
「父さん、ちょっと銀杏の木見てくる」
僕は父に声をかけて、ミチと銀杏の木へ向かった。
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