「Battle Field IN 狂うJAPAN」~雨の防人編~

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(数秒のブルースクリーン表示後、簡単なロゴ(下記参照)による説明で本映像は再生を開始) 20XX年 6月… 極東における軍事作戦記録映像コード名“MADNESS/JAPAN” 記録管理者:統合政府極東旅団所属:ロッテン・バーグ大佐 記録提供者:日本 自衛隊員:トシキ・カクタ ロゴ数秒後… 映像は、日本国内の家屋内部(隊員官舎)タタミの部屋に座った、黒縁眼鏡の日本人男性の顔が、画面一杯に映り、簡単な自己紹介から始まる。 角田:「俺は“角田(カクタ)”101遊撃出の、自衛隊員だ。今は、〇〇(地名)の通信施設警備要員として、配属されている。 この、国内一のド田舎駐屯地で、何故?自衛隊でも、ご法度の撮影機材 Go Pro持ち込んで、撮ってるかと言うと…」 画面が暗転し、聡明な顔の日本人男性が映る。 角田:「こちらは同室の“飯塚(いいづか)”通信科の隊員だ。こいつがまぁ、妙な話をしてよ。なぁ、そうだろ?飯塚ぁあっ」 飯塚:「(不機嫌そうな表情で)…ああっ」 角田:「オイっ、そう、キレんなって。お前が言ったんだろ?雨の日に現れる“彼女”を撮りたいって言ったのは」 飯塚:「……そうだ」 角田:「ほら、この通り…これがまた傑作で」 ??:「オイッ!角田ぁあああっ!」 ドアを開け、新たな人物が登場。 角田:「か、川島(かわしま)班長っ!?どうしたんすか?」 川島:「今、飯塚に彼女って聞こえたけど、どど、どぉーゆう事だ?」 飯塚:「班長…当官室からここまで、部屋2つありますけど、よく、聞こえましたね…」 川島:「そりゃ、聞こえるよー、だって、暇・だ・も・ん・!」 角田:「班長…そんな身も蓋もない事を言っちゃぁ…」 川島:「うるさいぞ、角田ぁっ!とにかく、話してみろ!飯塚ぁっ」 飯塚:「はい、あれは、雨の日の夜間哨戒の事で」 川島:「…………(表情、先程の勢いなくし)なぁっ…飯塚?その話長くなる?」 飯塚:「ええっ…?…自分から聞いといて?」 角田:「班長、あれです。コイツの勤務時、雨ん中に、女の子見つけまして」 説明しながら、飯塚のスマホを操作し、動画を見せる。 ※動画は、霧雨のような雨が降る中、施設前の山林に佇む少女が映す。彼女の目は、雨の反射と、こちらの照明の関係で、宝石、まるでエメラルドのような輝きを見せている) 飯塚:「この子です。名前もどこから来たのかもわからないですが、雨が降ると、時々出てきてくれるんです。それで…」 角田:「ずっりいよなーっ、こんな僻地で一人ジュブナイパリピ気取りでさぁ!何それ~って話ですよ。班長!だから、俺、これ撮るついでに、この謎ねーちゃんの正体及び、飯塚の幸せライフをぶっ壊してやろうと思いましてねぇ~」 川島:「角田……やりすぎじゃない?」 飯塚:「てか、お前、そんな気持ちで協力とかぬかしてたのか?どーゆう事だ!おおっ!?やめろや!」 角田:「や・め・ね・ぇ~!絶対にな。俺はそーゆう人間だ!」 叫ぶ撮影者…それに対し、引き気味の川島と飯塚の様子が映り、その直後に、4人目の人物が画面に現れる。 ??:「オイッ、いくら、夏季休暇シーズンで、人がいないとは言え、遊びすぎだぞ? 仕事しろ」 川島:「や、“山伏(やまぶし)”二曹!これは、違うんだよ。ご、誤解しないでね」 山伏:「…川島三尉まで…ここは民間人立ち入り禁止の施設です。角田や海外派遣の自分がいる理由です。それなのに…女を連れ込むとは、何事ですかぁっ!」 山伏の声に、映像は反転し(恐らく後ろを振り返った)佇む、 ずぶ濡れ少女(飯塚のスマホに映っていた人物と同一)を映し出す。 飯塚、角田、川島:「わあああああああ」 と言う絶叫で、映像は一度途切れる… 再開された映像には、飯塚、川島、角田、山伏が官舎内、事務所と思われる場所に立つ様子が映り、応接のソファには、目の輝きが異様に強い少女が座っている。  川島:「さて、この子が飯塚君の彼女と言う訳だが?」 飯塚:「班長、違います!話しただけです。雨の中、傘もささずだったので、夜に危ないと思って、良かったら中にって…」 山伏:「…招いちまったって訳か」 飯塚:「?」 角田:「ずぶ濡れで、夜危ないから、中おいでよ…何それ、何その会話?彼女じゃ~ん、付き合いたての奴じゃん。ずっりぃよ~、班長、どう思います?国民の血税で養われてる、我々、自衛隊員の崇高な任務を、コイツは女をひっかけると言う行為で穢してんですよ。俺達みたいな底辺クソ男子の敵ですよ」 川島:「角田ぁっ!」 強い恫喝と共に川島に顔面を張られる角田(映像一杯に拳が決まり、画面がぐらつく) 角田:「はっ、班長!」 川島:「お前は最低だ。そんな事、そんな事」 角田:「班長…すいません、俺」 川島:「底辺クソ男子に、俺も含まれてるってどーゆう事だぁあ」 飯塚:「(ええ~っと言う角田の声を遮り)えっ、そっち?アンタ、ほんと最低だな!」 川島:「(飯塚の方を向き)ああ、最低だよ!」 飯塚:「最低だな!!」 川島:「最低だよ!!」 飯塚:「おんなじテンションで返すなよ。何なんだよ。お前はよ?とにかく」 飯塚の傍に寄り添う少女に映像がズームされる。 飯塚:「君は一体、誰なの?雨の日にいつも来てくれたね?家は?家族は?教えてよ」 少女:「……(何も喋らず、宝石のようにキラキラした目で飯塚を見つめ返す)」 山伏:「その子は、お前が招いたから、来たんだ。これは向こうも、こっちも変わらんな」 角田:「そりゃ、どーゆう事ですか?二曹」 山伏:「多分、“アヤカシ”、“物の怪”の類だ」 飯塚:「…妖怪って事ですか?」 山伏:「雨女、不吉を招くと言う話や竜神の使い、雨をもたらす妖精…どちらかと言うと、プラス面が強いな。日本の場合…お前の何処を気に入ったかは知らんが、招かれたから、遊びに来たって感じだ。同時に、俺達が配属された真価も試される」 不意に撮影者が立ち上がり(映像が下から上へ上昇する)画面が山伏の方へ向く。 角田:「どーゆう事です?」 川島:「考えてもみろ。角田、お前は101…特殊作戦群の出身、山伏は海外派遣、 自衛隊じゃぁ、極秘扱いの実戦経験者、その二人が、いくら情報秘匿が強いとは言え、施設警備につくなんて、ありえない。つまりは…」 川島の言葉に山伏が頷き、同時に口を開く。 山伏:「俺達は彼女のような存在を確保するために集められた」 川島:「何もわからな…彼女のような存在を確保するために集めたと言う訳だ」 一同(少女までが)川島を無言で見つめる。 飯塚:「……あの、班長…今、めっちゃカッコつけてましたけど、二曹に乗っかりましたよね?途中まで、わからないとか言ってましたもんね」 川島:「言ってない!」 角田:「言ってましたよ!俺、聞きましたもん、なっ?飯塚?なっ?」 川島:「言っ・て・な・い!!(叫ぶ川島を“面白い”と言った表情で見つめる少女が、映像に映る)」 山伏:「どーでもいいだろ!そこはよっ。とにかく、海外や 政府が、この国で起きてる異常現象に注目してるって事だ。 ネットやニュースで見てないか?向こうじゃ“MADNESS/JAPAN” こっちじゃ、ひと昔前の流行った クールJAPANをもじって、狂うJAPANとか呼ばれてる。 現在進行形の、これらの事象に対し、政府と世界は何かしらの対応を求められてる」 山伏の話を映していた映像が窓に向けられる。“ヤバイな…”と言う 撮影者(角田)の声が重なる。 川島:「どうした、角田?」 角田:「照明にも映らないし、陸上受振機もついてますが、感知なし(室内モニターにカメラを向けながら)ですが、何ですかね?訓練の時に感じた気配が濃密で」 撮影者の声に反応するように、卓上の無線機がノイズ音とくぐもった声が響く。 ??:「こちらは…“トヨモト”…〇〇機関(恐らく専門機関の呼称だと推測される)の者だ。貴殿等の施設に異能要素を確認した。そちらが以前から存在を確認していた事については、不問とする。施設は包囲した。性急かつスムーズな引き渡しを要求する」 飯塚:「(無線機の前で拳を握りしめ)以前からって…一体、これはどーゆう事ですか?」 山伏:「政府、現政の能無しじゃない。実際に動かしてる奴等だ。連中は何年も前から調査をしてる。その候補地、目撃情報があった場所の一つがここだって事だろう。とにかく、俺達は」 川島:「規則にのっとり、彼女を」 飯塚:「嫌です!俺はこの子を、そんな目的のために招いた訳じゃない」 川島:「ずおぜったいに渡す事はしない」 角田:「あの…班長?」 川島:「(受信機を握り)オイッ、トヨモトとか言ったか?我々はそのような訓練を受けていない。お引き取り願おう」 撮影者を無視し、無線に怒鳴る川島は、憤怒の表情で全員を見渡す。 全員が先程の無言の様子をとる中、飯塚が“言い辛い”と言う顔で口を開く。 飯塚:「……班長、賛同してくれて、ありがたいんですが“ずおぜったい”のあたりから、のっかりましたよね?(そっぽを向く川島に飯塚がくってかかる)ねぇ?最初は渡す気でしたよね?ねぇ?」 川島:「イイ人だと思われたい!」 飯塚:「いや、無理だよ。さっきから、色々漏れてるよ。本音がぁ」 山伏:「飯塚、それは、もういい。俺もお前の話にのっかる。実際、彼女が何か障りを生み出すかどうかの確証はない。現状、無害だ。連中は只、くさいものに蓋、ただ、それだけ…とても、承服できない。角田」 角田:「おうさ!」 撮影者、威勢の良い声と共に89式小銃(自衛隊の突撃銃)を掲げる。 山伏:「この子を逃がす算段つけるぞ。相手は殺すな?上手くやれ! 撮影は続けろ。証拠や交渉に使える。飯塚、その子と、奥、隠れろ。川島三尉は…」 川島:「わ、わわわかった。わかった。後5分、5分でいいから、時間稼いでくれ」 叫び、飯塚と少女、川島が奥に消える。山伏がカメラに振り返り、ニヤリと笑う。 山伏:「角田」 角田:「ハイ?」 山伏:「長い5分になるぞ?」  場面は変わり、雨降る山林をナイト・ビジョンで撮った暗緑色の画面…その中を複数の黒装束の人間が走り、山伏と撮影者が、発砲、林の方からも、火線が飛んでくる様子が映る。 角田:「あの、忍者野郎共、20式(自衛隊最新鋭の突撃銃)持ってる。 二曹!」 撮影者を無視し、林に何かを投擲する山伏、直後に巨大な閃光が辺りを昼間のように明るくした。 角田:「閃光弾!やった…ウワッ(歓声を上げる画面、すぐ横を銃弾が掠める)」 山伏:「最新の暗視装置だ。強い光に対して耐性あり…角田、時間は?」 角田:「後2分です」 山伏:「不味いな…押し切られる」 銃弾が撮影者達の周りを直撃し始めた刹那、少女を伴った飯塚の姿が画面に現れる。 山伏:「飯塚?」 トヨモト(恐らくそうだと思われる黒服の人物): 「あれが、例の…その子を渡せ」 直後にトヨモトの周りを滝のような大雨が流れ、彼を押し流す。周りの黒服達が動こうとするも、頭上からさす、いくつもの光と、響くヘリの爆音を聞き、ゆっくりと林へ、消えていく。 角田:「班長…」 川島:「どーにか間に合った。昔の伝手だ。でっけぇ借り、作っちまったよ」 施設から現れる川島が携帯無線を振りながら、笑う。その横で、森へと消えていく 少女に飯塚が声をかける。 飯塚:「行ってしまうの?」 振り返る少女は、微笑み、頷く。 飯塚:「もう会えないかな?今度はちゃんとした、いや、ちゃんとしたって言うのは変だけど、普通に会えるよう、俺も頑張るから」 少女、少し考え(小首を傾げた様子から判断)空を指さし、答える。 少女:「また…雨の日に」 済んだ少女の声が非常にクリアな音声として、映像に記録された後、映像は止まる…  再開された映像は、再びのタタミ部屋、カメラを覗く角田と窓にもたれる飯塚が映っている。 角田:「よぉ、誰が見るかはわからんけど、いつも通りやらせてもらう。 あれから一ヵ月、待ちに待った雨だ。二曹は転属したが、俺と飯塚、班長は相変わらず、ここだ。全部、班長が手を回したらしい。全く、ナニモンだよ?あの人、そして…気になる飯塚と彼女の関係は…」 飯塚:「角田!」 飯塚が外を指さす。その表情は喜びに満ち、それに撮影者の笑い声が重なる。 角田:「おっと、ここから先は俺の判断で、見せるかどうかは決めさせてもらう。じゃな」 手を振る撮影者、映像はブラックアウト…再びのブルースクリーンが入った後、 “本件に関しては調査継続中” との表記が流れ、映像は終了する…(終)
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