山本五郎左衛門(1)

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「なぁ知ってるか? あの噂」 「噂?」  安藤(あんどう)康太(こうた)は焼きそばパンを口に放り込みながら矢嶋(やじま)雅人(まさと)にそう言った。  時刻は十三時。四時間目の授業が終わり、各自昼食を食べる頃。先程まで授業に集中して静かだった教室内が一瞬で騒がしくなる。  雅人はクラスメイト達の声を耳障りだと思いつつ、一番後ろの窓際の席に座っている犬飼(いぬかい)(つぐむ)を無理やり退かし、我が物顔で机と椅子を占領した。  そして同じく予め買っておいたパンとコーヒー牛乳を口に運びながら、先程康太が話していた噂について再び尋ねる。 「で、その噂って一体なんなんだ?」 「教えて欲しいか?」 「……」  もったいぶった話し方をする康太に、ピクリと眉が反応する雅人。飲もうとしたコーヒー牛乳を持つ手が止まり、鋭い目が康太を睨みつけた。  
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