山本五郎左衛門(1)

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 一方、雅人に馬鹿にされ否定された康太は、それでも尚、例の噂を信じていた。何故なら、康太には思い当たる節があったからだ。  呆れたような表情をしている雅人に向かってゆっくりと口を開く康太。 「でもさ、あれから(・・・・)翔馬(しょうま)行方不明だろ? 噂によると深夜の学校にそのバケモノは現れて、人間を喰うみたいだし……」  康太の言うあれからとは、雅人が悪ふざけで翔馬が大事にしていた財布を教室に隠した日のことだ。あの日から今日で丁度一週間が経過したが、未だに翔馬は見つかっていない。  翔馬の安否を心配し、次第に表情が曇っていく康太。もしあの日、悪ふざけで翔馬の財布を教室に隠す雅人を止めることが出来てたら? 深夜の学校に一人で向かう翔馬を止めていたら? 数え切れない後悔の波が康太を呑み込む。
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