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五月の生温い風が景と噤の頬を優しくなでる。最近になってやっと暖かくなり始めた季節に、景は心地良さを覚えた。噤と二人、渡り廊下で何をする訳でもなく空を見上げる。このなんでもない日常が景は好きだった。
「このあとの授業だるいなぁ。オレ寝ちゃうかも」
「そうだね」
「もし寝てたら噤起こしてくれよ」
「そうだね」
「あっ、でもオレと噤の席離れて……ん?」
景は噤の適当な相槌にやっと違和感を抱いた。こんなにぶっきらぼうで生返事な噤は久しぶりだ。驚き戸惑いつつ、一体どうしたのかと噤の顔を覗き込む景。
「なんか怒ってる?」
そう景が噤に尋ねた途端、噤は景の目から逃げるように目を逸らした。図星だ。
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