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真っ直ぐな目で噤を見る景。むしろ清々しいとも言える景の姿は、気づけば噤に小さなため息をつかせていた。
「矢嶋くん達のことだよ。矢嶋くんが安藤くんのこと殴ろうとしたの止めたり、僕の席勝手に使ってたのを注意したり……その事についてボクは怒ってるんだ」
「なんで?」
「危ないからだよ。怪我したら痛い思いするのは景ちゃんなんだよ?」
まるで母が子を叱りつけ、心配するかのように噤は自分よりも大きい景の手を両手で包み込んだ。厚く、ゴツゴツとした景の手は、噤の薄っぺらくて、ひょろひょろとした手とは比べ物にならない。
だがそれでも噤は景が心配だった。もっと自分を大切にして欲しかった。
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