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山本五郎左衛門(4)
「──────でさ、その野良猫すっげーオレに懐いてくんの。もう可愛くって」
「景ちゃんってホント猫好きだね」
景と噤は二人しかいない教室で談笑をしていた。
放課後の教室はいつもと違う雰囲気を醸し出してる気がする。それは他のクラスメイトがいないからなのか、はたまた電気が消され教室が暗くなっているからなのか。どちらにせよ二人はこの“放課後”が好きだった。
「でも可愛いからって野良猫は触っちゃダメだよ?」
「わかってるって。さすがのオレも──────」
「気合いが足りん!ラスト一周!」
すると突然、開け放たれた窓からゴリドンの怒号のような声が聞こえてきた。その声に思わず、何事だと窓から顔を出す景と噤。見ればサッカー部が校庭を走っていた。
今にも倒れそうな顔をしているサッカー部に対し、何度も“気合いが足りん、ラスト一周!”と、壊れたロボットのように繰り返し叫ぶゴリドン。
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