山本五郎左衛門(4)

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 兄貴──────即ち景のことだ。  刹那、康太の影に隠れていた雅人がチラリと噤の表情を盗み見た。自分は必要が無いと遠回しに言われた噤が今、どんな顔をしているのか興味津々に覗き込む。きっと悲しそうに俯いてるに違いない。雅人はそう思った。  が、噤の表情はいつも通りだった。いつも通りの間抜け面。その表情に雅人は落胆し、そっぽを向いた。……だから誰も、袖の下で噤が拳を握りしめていることに気づかなかった。  康太が景に向かって話を続ける。 「田辺翔馬ってヤツ知ってるか? 俺達のダチなんだけど」 「知ってる。いつもお前ら三人で連んでたもんな。最近は安藤と矢嶋の二人だけだけど」 「翔馬が行方不明になっちまったからな」  康太の言葉に驚く景。
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