山本五郎左衛門(5)

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 闇夜のような空が学校を取り巻く。  辺りは異様なまでに静まり返り、冷たい風がさらさらと吹いていた。木々が揺れているのにも関わらず、葉のこすれる音も落ちる音も聞こえない。まさに不気味──────。 「おい、犬飼遅くねーか」  すると、その場で腕組みをしながら貧乏ゆすりをしている雅人が、小さく舌打ちをした後、康太に声をかけた。そうだな、と康太も雅人の意見に同意しながら、ポケットからスマホを取り出す。電源ボタンを押した途端パァっと画面が明るくなり、現在の時刻が表示された。午前零時二十分──────。約束の時刻をもう既に二十分も過ぎている。 「遅刻してんじゃねーか。もしかして犬飼の奴、ビビって逃げたんじゃねーの?」  康太のスマホを覗き込んだ雅人が、景のことをおちょくるように言う。それに対して康太はすぐに反論しようとしたが、言葉が出てこなかった。もしかしたら雅人の言う通りかもしれない、と。  いくら喧嘩が強い景でも怖いものがないとは言いきれない。翔馬探しを手伝うと言ってた時は強気だったが、本心は違ったのかもしれない。  せめて景がスマホを持っていたら連絡が取れて楽だったんだが……と肩を落とす康太。
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