山本五郎左衛門(6)

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 やがて康太がスマホから目を外し、顔を上げる。そして雅人を睨みつけながら全員に言った。 「翔馬は今、一年D組に隠れているそうだ」  と。  雅人の首すじに嫌な汗が流れ落ちる。康太が言いたいことなど既にわかりきっていた。  が、康太はこれ以上何も言わなかった。ただ一言景達に“一年D組に行こう”と呼びかけ、再び先頭を歩く。 「矢嶋行かねーのか?」  すると、康太の後ろをついて行こうとした景が雅人に声をかけた。噤も雅人と康太の状況を心配そうにし、輪に入りやすいよう迎え入れようとする。  だが雅人は何も答えず、まるで反抗期の子供のように背を向けた。  そんな雅人に景と噤は互いに顔を見合せ、小さくため息をついた。 「じゃあオレ達先行ってるからな。何かあったら叫べよ」  景と噤は雅人を置き去りにし、康太を追いかけた。
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