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再会
「別れよう」
私の目の前で、私の部屋の床に額を押し付けている彼にそう言った。
「待ってくれ」
彼が慌てて顔を上げた。
「あれは誤解なんだ。ほんとだ。ちゃんと誤解だって証明するから」
彼の瞳は真剣だった。
私のスマホにメッセージが届いた。
私達2人の会社の同期間宮 鈴からだった。
そこに貼られていた写真に、私は息を呑んだ。
あんな写真を見てしまって、あれは誤解だと言われても、それを素直に信じる人なんているだろうか。
あれを誤解とするのなら、浮気なんてこの世の中には存在しなくなるんじゃないかな。
冷静に分析してしまう私がいた。
「莉乃、好きなのは君だけだ。信じてくれ」
鈴からのメッセージには、こう書いてあった。
(遥斗が言ってたよ。莉乃とは結婚する気はないって)
私は、写真よりもこの言葉に傷つけられていた。
遥斗がそう言ったあの日、鈴がその場にいた事を私も知っている。
確かに遥斗はそう言った。
もし100歩譲って、写真が偽物だったとしても、遥斗の言い放った言葉は、彼の口から発せられたものに間違いなかった。
「もう、帰って」
「莉乃、頼む。俺を許してくれ」
私達は、ずっとこの事について話している。
でもこんなのは、いくら繰り返しても単なる堂々巡りだ。
私に突き付けられた事実は、何も変らないんだから。
「さよなら」
私がこんなに怒っているのは、ほんとに遥斗が好きだからだ。
だからどうしても許せない。
冷静になんて考えられない。
今、私の心臓は、誰かに鷲掴みにされているかの様に、痛かった。
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