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「お父さん、お母さん、ありがとうございました。」
湊を抱きかかえながら、俺は莉乃のご両親の傍へ近付いて行った。
「いいえ、こちらこそ、久しぶりに湊と一緒にいられて嬉しかったわ。」
莉乃のお母さんが、本当に嬉しそうにニコニコしていた。
昨日、莉乃のご両親に湊を預けて良かったと感じていた。
「遥斗、湊をチャイルドシートに乗せておいて。」
「あ、あぁ。わかった。」
突然、莉乃にそう言われて、俺の両親と兄が莉乃のご両親に挨拶をしているのを横目に見ながら、俺は車に向かった。
湊をチャイルドシートに座らせて、隣の席に俺が座ろうとした時、背後に人の気配がした。
振り向くと、其処には兄の姿があった。
「遥斗、湊君の事は俺が見てるよ。」
「あ、あぁ……」
意外な兄の提案に、俺は驚いていた。
「じゃあ、頼む。」
兄が、既に車に乗り込もうとしていたので、俺はなんとなく車から降りていた。
任せて大丈夫だろうかという思いが少しあって、俺は振り向きながら様子を見ていた。
俺の心配をよそに、2人は楽しそうに笑っていた。
あまりにも、楽しそうなので、一体何を話しているのだろうかと、気になった。
これは、ちょっとした嫉妬心なのだろうか。
父と母が、挨拶を終えて車に向かって歩いて来ていた。
「先に車に乗っているわね。」
すれ違い様に、母が俺にそう言ったけれど、視線は完全に湊が乗っている車に向けられていた。
そして、足早に車に向かっていた。
「両親を送ったら、また戻って来ます。」
俺は、莉乃の両親にそう告げた。
「昨日から忙しかったから、疲れているでしょ。そのまま家に戻ったらいいわ。」
莉乃のお母さんが、そう言ってくれた。
確かに、色々な事があり過ぎて、疲労感はあった。
でも、俺はその言葉に甘えていいのかどうか、悩んでいた。
「ありがとう。じゃあ、そのまま帰るね。」
そんな俺の気持ちを知ってか知らでか、莉乃はいとも簡単にそう決めてしまった。
「じゃあ、また。」
莉乃のお母さんも、あっさりとそう言った。
「遥斗、ご両親が待ってるから行こう。」
「では、またご連絡します。行って来ます。」
莉乃に促されて、仕方なく俺は車に向かった。
車の中からは、湊と家族の笑い声が聞こえて来ていた。
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