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「もしかしたら私たち、あまりにも近くにいる時間が長過ぎたのかもね……」少し寂しそうに六花は言う。
お互いの気持ちはわかっていたのに、失うことが怖過ぎて今の気持ちを伝えられなかった二人は、今やっと、お互いの心情に寄り添えるようになったのかもしれない。
もしかしたら今なら、あの頃に言えなかったことが言えるかもしれない______。太一はふと思い立って、彼女を呼ぶ。
「なぁ、六花______」
「んー?」
六花が太一の方を向き、聞き返したその刹那______。
俺は、ずっとお前が大好きだ______。
気付いた時には恋してた______。
気付いた時には自分の世界に君がいて______。
気付いた時にはどんな場面でも、見る景色は君の笑顔で溢れていた______。
それでもなぜか言えなかったあの頃の気持ちを、太一は吐き出したのだ。
今さらなんて、言わないでくれよ______?
太一はすぐに付け足した。すると、六花はその長い髪を耳に掛けながら微笑む。
ありがとう、太一______。
私も、あなたのことが大好きでした______。
きっと、太一ほど自分を愛してくれる人はもういない______。
そして、太一ほど自分が心から大好きだと思う人もいない______。
絶対に結婚相手には言えないことだけれど、六花にもあの頃言えなかったことがあるのだ______。
彼女はそう言った後、過去を思い返して空を見上げた。
あの頃に戻れたらな______。
彼女はそっと、そう呟く。
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