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気付けば、時刻は午後3時を過ぎていた。
春とはいえ、まだ夜になるまでが早い時期である。この時期は、3時を過ぎればだんだん日が暮れていき、寒さも増してくる。太一は「そろそろ帰らないとだな……」と、六花との別れを惜しみながらも言った。
「うん。そうだね……」六花も太一と同じ気持ちであった。この時ほど、この時期の日の暮れる早さを呪ったことはないだろう。そんな時、六花は太一を呼ぶ。
「ねぇ、太一______」
彼女は下を向いたまま彼を呼んだ。
「なに?」太一は隣を歩く六花の方を向く。
「私も、聞きたいことあるんだ______」唐突に六花は言う。その内容について興味を持った太一は、「なに?」と再び聞いた。
六花は立ち止まる。それに釣られて、太一は彼女よりも何歩か先を歩いたところで足を止めて彼女の方を振り返る。
六花は、ふと、微笑みながら太一の方を向いて問いかける______。
いつから私のこと好きだったの______?
太一は、うーん、と少し考えてから、まるで思い付いたかのように______。
わからん。気付いたら好きだった______。
太一のその答えを聞き、六花は嬉しそうに言う。
ほんと、そういうとこ______。
太一の世界に、少しだけ色が蘇った。
『恋々ー言えなかったことー 完。』
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