ナイモノネダーリン/冷酷な旦那様と愛されたい私

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そっとスマホの画面に手を触れてみる。ふわっと光った液晶画面に映る壁紙に設定されている写真は─…高校生時代、隠し撮りに成功した唯一無二の尊い一枚。 隠し撮りなのでもちろん笑顔でピースサイン、なんてものでは無い。仏頂面で頬杖をついて窓の外を眺めている美しい横顔。慌てて撮ったので彼にピントは合っていないので少しボヤけている。 私みたいな変態に勝手に隠し撮りをされた可哀想な被害者の名は─…四條 怜弥さん。 何も私ひとりに限らず、彼のことを慕っている女子は同じ学校に多数存在した。 それは彼が大手企業グループの御曹司であるという理由以外にも、高身長で常に成績はトップ。おまけに運動神経抜群ときたら…好きになるなと言う方が難しい話しである。 高校を卒業してから何年経ったのか、すぐに思い出せないほど時間は経過しているのに…今も進行形で続いている私の推し活という名の片思い。 その思いは私を奮い立たせるエンジンの役割を果たし、彼と同じ大学に入り…その後、御実家が経営している企業のうちのひとつを任された彼が働く会社に自力で入社することに成功した私は─… 「……あ、社長だ」 「うわあ…朝から会えるとか奇跡」 「女子社員のやる気向上、気分上々」 「この為に仕事してると言っても過言では無い」 「─…ね、沙羅?社長は“最推し“だもんね?」 「うん、神推しね?唯一無二の絶対的存在!私の中の君主!命果てるまで推し続けます!」 今現在、彼が代表取締役となった会社で平社員として働いていた。
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