ナイモノネダーリン/冷酷な旦那様と愛されたい私

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ストーカーだと言われてもおかしくはないが、今の世の中には“推し活“という便利な言葉が存在する。 “推し休暇“なる推し活が理由で休める制度がある企業まで出てきたこの時代…誰かを推すということは、まさに社会現象ともいえる。人々の日常に無くてはならないものになりつつある。(持論) 彼は私の推しだ、と公言しておけばある程度の行為は許される…というより「あー、また言ってるな」と流されることが多い。 友達やお店の店員さんなど、自分の気になる人のことを“推し“だと崇め…それで満足してしまえるのでリアルな恋愛を求めずとも生きていける。 私がお見合いを拒み続けている最大の理由─… 結婚なんてしてしまえば最後、生き甲斐である推し活が出来なくなってしまうということだ。 「私は結婚に向いてない。やっぱり行かないってパパに連絡しておこう」 仕事の昼休憩に同期達と外でランチを楽しんだ後、社内に戻る前に父にお見合いのお断りの連絡をすることにした。 同期達には先に戻ってもらい…会社の外で父に電話を繋げてみる。しかし、どれほど待っても父が通話に応答することは無く… また帰りに電話を掛けよう、っと思い直しスマホでメッセージを作成しながら社内へと足を踏み入れた。 歩きスマホは危険…なんてよく言うが、スマホを見ながら歩いていて今まで危険な目に会ったことがない。ほんの少しの間、手元を見て歩いていただけで人生が狂うような出来事にあうなんて。 そんな確率はきっととんでもなく……低い。 そう思って生きてきた私もどうやら、 ─……例外ではなかったらしい。 「……っあ…すみません、、」 目の前のエレベーターが開いた直後、私の前方不注意により中から降りてきた人物と接触してしまい…手に持っていたスマートフォンが地面へと落下した。 私が拾うよりも先に、地面に転がっているスマホを拾い上げてくれたその人物にお礼を言おうと、顔を上げると─… スマホのホーム画面に設定されている、私に隠し撮りをされた自身の学生時代の写真を凝視しているCEO─…四條怜弥の姿がそこにあった。
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