550人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「これほど長い間、海江田を慕うほどの気持ちがあるなら…俺に心変わりすることはないだろ?」
「……まぁ、心変わりをすることはないですね」
正確に言うと、海江田氏ではなく…貴方への恋心が終わることは無いという意味ですが。
「……なら安心して任せられる。俺に気がある人間には務まらない、君にしか頼めない任務だ」
婚約者のフリ─…なんて願ったり叶ったり。今世で彼の隣を歩けるだけでも幸せな事なのに…私みたいな底辺の人間が天下の四條怜弥様の婚約者になれる日が来るなんて!(フリ)
彼の言う婚約者のフリ、とは…仕事の取引先の相手との打ち合わせに同席して欲しいというもので。なんでも…取引先の社長の娘を嫁に貰って欲しいとしつこくせがまれているらしく。
自分には婚約者がいる、と一度嘘を言ってしまったことがきっかけで…本当に存在するなら会わせて欲しいと言われたみたいだった。
「そういうのって、本当…嫌になりますよね」
「……分かったような口ぶりだな?見合いの経験でもあるのか?」
「いや…ドラマとかでよく見るなぁ…って」
実家が名家であることを自分から人に話すのは苦手だった。隠しているつもりも無いが、自慢するようなことでもないと思っていたからだ。
だから、あくまでも平社員─…ただの一般庶民として怜弥社長に同行したのだが、、
途中でわざわざ品のいい綺麗なワンピースをプレゼントしてもらい…美容院で身だしなみを整え、彼の隣に立っても恥ずかしくない見た目に変えてもらった後、向かった取引先の社長の元で─…
「……え…?沙羅さん、ですよね?四條さんの婚約者って、まさかっ!あなただったんですか?」
先月、お見合いをして断った相手に再会することになるとは夢にも思わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!