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「まさか…そんな事情があったとは。顔を上げてくれ。これで君が婚約者について曖昧なことしか答えなかった理由に納得がいくよ。」
怜弥さんの嘘を信じ込んだ様子の守谷社長は、改めて姿勢を正すと、、
「東堂家の後ろ盾がある以上、君を敵に回すようなことは出来ない。契約の話はもちろん進めさせてもらうよ。いやむしろ…こちらからお願いするべきかな?」
「ありがとうございます。守谷様の業務効率化にお役立ていただければ幸いです。今後とも、弊社を宜しくお願いいたします」
よく分からないが、どうやら私は怜弥さんのお役に立つことが出来たらしい。
しかし…顔の知れた人物に、こんなにもハッキリ”婚約者”だと言い切ってしまって良かったのだろうか?いや、私としては幸せ以外の何物でもありませんが。
守谷社長との打ち合わせが終わり、この後どうするのかな…と夢見心地の気分のまま怜弥さんの後に続いて、共に地下の駐車場までやってきた。
運転手つきの黒色のセダンでここまで来たので、当然それに乗って会社へ戻ると思っていたのだが、、
「悪いがもう少しだけ、俺に時間をくれないか」
「……え…?」
突然、私の腕を強く掴んだ彼は…既に待機している車を無視して地上へと続くエレベーターに乗り込み、、数時間前と同じように威圧的な視線を私に向けると─…
「君の人生は、いくらで買える?」
「……はい…?」
「伝わらなかったなら…言い方を変える」
理解不能な発言に、思わず身構えた次の瞬間、、
「俺と、結婚して欲しい。」
なんて…夢にまで見たセリフが彼の口から飛び出したので、一択しか答えがないことが確定している私は迷うことなく…静かに首を縦に降ったのだった。
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