ナイモノネダーリン/冷酷な旦那様と愛されたい私

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その後、場所を変えて─… 守谷社長の会社を出てすぐの外資系ホテルの中に入っているカフェに二人きりで訪れるという…デートのような展開に心躍らせながら、彼の隣を歩いた。 「改めて…確認したいんだが、、」 向かい合うようにして座り、各々注文したドリンクが運ばれてきた頃…ようやく私の目を見てくれた怜弥さん。 「君は、本当に─…」 「はい…父の実家が先代から続く名家で、父自身も事業に成功し、今はっ」 「ネット広告の大手─…toDoの会長?」 「……はい。その娘が私、東堂 沙羅です。」 特別目立つ珍しい苗字でもない。ただの平社員として働いていて「もしかして、あの東堂さん?」なんて聞かれたことは一度もない。 家がお金持ちであろうと、そんなことは見た目には分からないので…私のような人間が一人、社員に紛れていたところで怜弥さんが気にとめることなど今まで一度もなかったのだろう。 「父親の会社ではなく、ウチで働く理由は?それに、見合いを断ったと言ってたが…結婚願望は無いのか?」 「父の力を借りて働くのは嫌だったので。結婚に多少の憧れはありますが…それによって趣味を制限されるのも嫌で。お見合いは全てお断りしてきました」 「…なるほど。いや、まさか…ウチの社員に東堂のお嬢様が紛れていたなんて。夢にも思わなかったよ」 お嬢様、なんて…聞こえはいいが、私自身がなにかを成し遂げたわけでもない。それに特別扱いされるのを父は昔から嫌っていたので、家政婦さんや運転手さんなんて存在しなかった。 「私自身には、なんの力もありません。並外れた生活を送ることも無く…人並みの暮らしをしてきたので、特に才能があるわけでも、、」 「─…それは、違う」 「…え?」 「名家に生まれた君は…もうそれだけで十分、価値のある存在だ」 「価値のある、存在…?」 「あぁ…少なくとも、俺にとっては。」 そう言って微笑んだ彼の美しすぎるご尊顔に、胸の奥がギュンと高鳴る。間近で見る推しの笑顔ほど、心臓に悪いものは無い。
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