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「へぇー…結婚式、挙げないんだ?」
「はい…怜弥さんの仕事が忙しいみたいで。海外への出張予定も入っているので。」
「今は無理でも、いつか挙げられたらいいね?」
「……そうですね…憧れは、あります」
気まずい雰囲気から始まった食事だったが、お酒が進むにつれて会話が弾むようになってきた。
っと言っても内容は当たり障りのないものばかりで。結婚式を挙げない件について、予め怜弥さんと作っていたシナリオをそのまま伝えただけである。
それでも、海江田さんは表情を崩すことなく…終始優しい穏やかな顔で私と目を合わせていた。
(もうそろそろ、帰ってくれないかな?)
「22時…過ぎちゃいましたね。そろそろお帰りになられた方がいいですよね?帰りの車を手配するので少しお待ちいただけますか?」
ワインが無くなったタイミングで、帰り支度をして貰えるようにそれとなく話しかけてみたのだが、、
「─…その心配は、必要ないよ」
っと…力強い声で押し切られ、返答に困っている私を見て、、彼はここに来て初めて表情を崩した。
「だって君、俺に抱かれたくて…今ここにいるんでしょ?」
無表情で私を見つめ、淡々の話す海江田さんを見て…思わず手に待っていたグラスを落下させてしまった。
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