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海江田さんの手が僅かに私の髪に触れた瞬間─…全身に鳥肌がたち、咄嗟に目の前の彼を突き飛ばしてしまった。
「痛いなぁ……暴力は良くないよ?沙羅ちゃん、四條に嫁いだんだよね?暴力事件なんて起こしたら、面倒だろ?このこと、怜に報告されたくないなら…そろそろ大人しくしてくれる?」
怯むことなく再び私に手を伸ばしてきた彼に背を向け…慌ててその場から逃げ出した。
「だから…なんで逃げるの?」
なぜって、、
あなたが追いかけてくるからです。
っとは言えないので…返事をする代わりに玄関直結のエレベーターまで走った。先程怜弥さんが降りていってしまったので、ボタンを押したところでこの扉が開くまで少し時間がかかる。
その前に海江田さんに捕まってしまったら…なんて。考えただけで涙が溢れ…視界が歪む。
この家を出ていった怜弥さんも、彼に言われてここへやって来た海江田さんも…悪くない。悪いのは嘘をついてしまった自分自身。
今のこの状況は全て、自業自得。誰かを責めることは許されない─…自分の身は自分で守るしかないんだ。
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