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「沙羅ちゃん、」
エレベーターのボタンを連打している私のすぐ後ろで、海江田さんの声がして─…
終わった…っと、半ば諦めモードで瞳をギュッと閉じた時、、
「……沙羅?」
今度は前方から、私の名を呼ぶ愛しい人の声が聞こえたような気がして…閉じていた目を開く。
「どうした…?」
エレベーターから降りてきた怜弥さんは、私と目が合うなり…表情を曇らせた。
なにか怒らせるようなことをしてしまったのだろうか…っと、頭をフル回転させてみるが、、今は冷静に物事を考えられる状態では無い。
「…怜、今夜は帰らないはずじゃなかったの?」
背後から聞こえてきた海江田さんの声により、ほんの少し緩んだ気持ちが再び張り詰めたものへと変わる。
「あぁ…状況が変わった。そんなことより─…」
突然、怜弥さんに腕を掴まれ…そのままグッと力強く引かれたことにより、身体が前方へと傾く。
そんな私の体を、自身の背に隠すようにして身体をズラした怜弥さん。
「好きに過ごせとは言ったが─…泣かせていいと言った覚えは無い」
そんな耳を疑うような言葉が怜弥さんの口から飛び出し…心臓が煩く暴れ出す。
─…この展開は、予想してなかったな。
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