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「……はっきり言わせてもらうが、迷惑だ」
「ですよねっ…すみません、すぐ片付けを」
「そうじゃない。本心を隠して裏で一人で泣かれるのが迷惑だ…って言ってる。」
なにを思われたのか、、ダイニングのイスに腰掛け…海江田さんが使用していた箸を使って残っていた料理を無言で食べ始めた怜弥さん。
そのありえない行動に目を見開く。
「れ、怜弥さんっ…どうして」
「どうして…って。本来これは俺の為に沙羅が用意した食事だろ?」
「それはっ…」
「海江田が来ることを沙羅は知らなかったはずだ。ってことはこれ全部、俺と食べようと思って用意したんじゃないのか?」
そうだけど…そうだ、って言っていいの?
「……仮初でも家族、なんだろ?」
「…え?」
「期限付きの契約婚とはいえ、籍を入れた以上俺は君のことを無下に扱うつもりは無い。君を傷つけたくて結婚を申し込んだわけじゃないだ」
「怜弥さんっ…」
「沙羅が俺の為にしてくれたことには、ちゃんと感謝を伝えたい─…手料理をたくさん準備してくれてありがとう。一人で大変だっただろ?」
ああ、どうしよう。
好きすぎて辛い。こんなにも苦しくて辛いのに、言葉にすることが許されないなんてっ…
あの時、嘘をついてしまったことを何度悔やんでも…もう元の関係に戻ることは出来ない。
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