ナイモノネダーリン/冷酷な旦那様と愛されたい私

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休日の市役所を訪れる人間は少なく、とても閑散としている。目的を達成した私たちは長居するようなことも無く、早々に役所をあとにする。 市役所の前に停められている車が二台。ひとつは彼の愛車である高級外車の白のSUV。もうひとつは黒塗りの国産車のセダン。 「─…沙羅(さら)」 彼の愛車の目の前まで来たところで、名を呼ばれたことにより立ち止まる。 「君が乗るのはあっち。行動を共にするのはここまでだ」 「……ですよね」 “他人を車に乗せたくない“と以前言われたことがあるので、これまで乗せてもらったことは一度もなかったが─… 籍を入れたので、あわよくば私も…っという期待は呆気なく散った。どうやら彼の中で私たちはまだ“他人“のままだったみたいだ。 「俺はこの後仕事に戻る。遅くなるだろうから、帰りを待つ必要もない。好きなように過ごして先に部屋で休んでもらって構わない」 「分かりました…ありがとうござ、」 「ただ─…」 少し離れていた私たちの距離を詰めるように、一歩近づいてきた彼は、冷たい視線で私を見下す。 「四條(しじょう)の姓を名乗るなら、それ相応の行動をするように。」 「……はい…?」 「問題を起こすな、っと言ってるんだが…理解できないか?」 愛なんて必要ない、っと言っていただけに。ただの“部下“から妻に昇格したところで…その扱いは変わらないらしい。 「了解です。社長っ、、んむっ」 社長、っと呼んだところで彼の左の手が伸びてきて…輪郭を覆うように顎に触れたあと、両頬を挟むようにして掴まれ、、唇を突き出したような間抜け面を晒すことになった。
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