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「あ…熱いっ、、」
中身はホットのコーヒーだったみたいで。純白のドレスを汚すようにして、茶色いシミが広がっていく。
「火傷してしまいます、すぐに脱がないと!!」
近くで一連の流れを傍観していた衣装スタッフの女性が、ドレスを自分で脱ぐことが出来ず狼狽えている私を見て慌てて駆け寄って来てくれたのだが、、
「……手を貸した人は、全員解雇します」
なんて…信じ難い言葉を口にした美蘭さん。その言葉にスタッフの人達の動きが一瞬にして止まる。
「このドレスに似た形のものを、別で用意しています。幸い…今のドレスをあなたが試着してるところを怜さんはご覧になられていないので。別のものになったところで彼がそのことに気付くとは思えないわ」
「……仰ってることの意味が、よく分からないのですがっ」
「怜さんの顔を潰したくないのなら、私の頼みごとを聞いてくれる?あなたが従えば私もすぐに新しいドレスを用意すると約束するわ」
「頼みごと…とは、なんですか?」
「決まってるじゃない。四條の後継者争いに怜さんが関与しないように…私たちに協力して欲しいの」
あぁ…なんてことだ。
くだらない、幼稚な頼みごとの為に怜弥さんが選んでくれた宝物のドレスが汚されてしまった。
代わりなんて、存在しない。するはずが無い。
これは唯一無二、たった一つしかない…怜弥さんが私のために選んでくれた特別なドレスだったんだ。
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