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吉と出るか凶と出るか、もう会場へ行ってみないと分からない。これが私に出来る最善策で…精一杯の足掻きだった。
あとはこの非常事態を、怜弥さんがどう受け止めてくれるか…それに全てがかかっている。
私の姿を見て驚いていた様子のホテルのスタッフさんに連れられて…パーティ会場へと続く扉の前まで案内してもらった。
慣れない着付けに手間取ったせいで、開始時刻ギリギリ五分前に到着するという非常識ぶり。扉の向こうで怜弥さんがどんな顔をしているのか想像するだけで胸が張り裂けそうになるが、、
……なるように、なる。
っとよく耳にする、ことわざの様なものを何度も自分の心の中で呟いて…緊張で汗ばむ手でドアノブを握り、ゆっくりと引いて扉を開いた。
その瞬間、、
ザワザワと話し声で溢れていた会場から音が消えたかのように、一瞬にして静寂が訪れる。
直後、鋭い刃物を向けられているような冷たい視線が四方八方から飛んできて、、
(ああ…間違ったかもしれない)
っと、秒で後悔したところで─…
「沙羅」
離れたところから、確かに私の名を呼んだ怜弥さんの声が……静かな会場内に大きく響いた。
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