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未だにヒソヒソと聞こえてくる悪口。私自身は気にならなくても、家族のみんなの耳にも聞こえてしまっていると思うと…胸が痛い。
だからこそ…しっかりと名誉を挽回する必要がある。
司会のアナウンサーが怜弥さんに挨拶をお願いしたところで、、四條家のトップである怜弥さんの祖父…忠弘さんが立ち上がりそれを阻止する。
「まずは新婦─…沙羅さんのお話が聞きたい」
怜弥さんに全て任せるのではなく、自分の口で説明しろ…っと言われているようでドキッとしたが話すきっかけを作って貰えたことに感謝するべきだ。
「この度は、私たち夫婦の為に御足労いただき誠に─…」
定型文のような挨拶を済ませ、震えそうになる手をギュッと握り…軽く深呼吸する。
「私のこの装いに、ご不満な方が大多数だということは…承知しております。その上で…もう暫くお付き合い頂ければ幸いです。」
頭の中に浮かんできた言葉をそのまま繋げて…手に汗を握りながら、台本のないぶっつけ本番のスピーチを始める。
「この晴れの日の舞台に振袖を選んだ理由は─…怜弥さんに、振袖姿の私を見て貰いたかったからです」
即興で思いついたエピソードだが、その気持ちに偽りはなかった。既婚者になれば振袖を着る機会なんて無くなってしまう。その前に─…
振袖姿の私を彼の記憶の中に残して欲しいという思いがあるのも事実だった。
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