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片想いの終着点
次の日、俺は久しぶりに真斗と出掛けた。
今日は真斗の誕生日。
最愛の人がこの世に生まれた日。
この尊い日を俺は最高の日にしたい。
出だしは好調。
高級フレンチレストランの料理に舌鼓をうち、美味しいワインも堪能した。
やはり、真斗は自分の誕生日を忘れていた。
生まれ年のワインを手配して正解だった。
真斗は照れ臭そうに、ワインを飲んでいた。
そして、俺は次のサプライズを決行した。
だが、これが俺と真斗に溝を作るなんて誰が予想出来ただろう。
「後藤さんにライブのチケットを譲ってもらったんだ。」
「うん。」
「真斗のこと格好いいって話したら会ってみたいって。」
「うん。」
「でも、ほんとは会わせなくなかった。」
「なんで?」
「真斗に興味を持って欲しくない。」
「なんだよ、それ。晶に言う権利ないだろ。毎週、違う香水の匂いつけて俺んとこ来やがって。俺が何とも思ってないとでも?俺はそんなできた人間じゃないんだよ。」
真斗から怒りの感情が伝わってきた。
それは俺に対する嫌悪感に他ならない。
終わった……真斗に嫌われた。
「真斗...」
それでも、俺は真斗の手を離さなかった。
しかしその手を真斗は振り解き、告げた。
「俺、帰るわ。ごめん。チケット返すから後藤さんとみてこいよ。今日はありがとう。」
それは俺に対する拒絶だった。
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